日本語動詞のアスペクト分類は難しい?

日本語教育
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日本語は雰囲気で伝わる言語です。
「車が走ります」と「車が走っています」を使い分けられなくともある程度伝わります。
日本語の「ている」の用法は非常に難しい概念です。
しかし、美しい日本語を身に着けるためには細かな文法的な知識が必要ですので大まかに把握しましょう。

日本語のアスペクト研究

アスペクトとは、動作・出来事の時間的性質、およびその捉え方に関わる文法的カテゴリーのことをいいます。
開始・継続・終結などを論じるときに使われる概念です。

例えば、「食べる」という動詞は
今ごはんを食べている(進行)→もうごはんを食べた(完了)へと移行します。

金田一春彦の動詞4分類

金田一春彦は1950年『国語動詞の一分類』という論文で「動詞のて形+いる」から日本語のアスペクトを説明しました。
①「ている」が付くかつかないか、②いつも付くのかそれとも付くときと付かない時があるか、③どんな意味を表すのか、ということを手掛かりに動詞を4種類にわけました。

  1. 「ている」が付かず、状態を表す :状態動詞
    例) ある いる 要る
  2. 「ている」が付いたとき、動作の進行を表す :継続動詞
    例) 走る 食べる ⇒ 走っている 食べている
  3. 「ている」が付いたとき、結果の状態を表す :瞬間動詞
    例) 結婚する 知る ⇒ 結婚している 知っている
  4. 「ている」が付くのが普通 :「~ている」の形でしか用いられないもの
    例) そびえる すぐれている ばかげている

金田一春彦の動詞4分類への批判

例えば、「太っている」は、やせていた状態から太った状態に移行した後の結果の状態を表しています。
金田一の分類では、瞬間動詞に分類されるが、太ることは瞬間なのかという問題が生じる。

そこで奥田靖雄は、動詞の動きが「継続」か「瞬間」かということが重要なのではなく、「主体の動作」か「主体の変化」かということが重要なのだとしました。

「主体の動作を表す動詞」+「ている」=動作の進行
「主体の変化を表す動詞」+「ている」=結果の状態

だとしました。このことで上記の問題が解決しました。

ところが、「木が倒れている」は「木が倒れている途中」と「木が横たわっている」両方の意味をもち、さらなる問題を提起しました。
日本語のアスペクトは多くの学者が研究している分野です。そのため多くの理論が出されています。


「ている」の用法まとめ

日本語学習者は研究を見る必要はなく、用法を理解できれば良いですね。

「ている」中心的用法

  1. 動作・出来事の継続
  2. 変化の結果の状態

「ている」の派生的用法

  1. 反復
  2. 経歴・経験
  3. 完了
  4. 性質・属性

「て形+補助動詞」

「てある」
他動詞とともに使われ状態の継続を表します。
例) ドアが開けてある

「ておく」
準備を表します。
例) スプーンを出しておく

「てみる」
試行を表します。
例) 食べてみる

「ていく/てくる」
空間的用法と時間的用法があります。
空間 例) あっちへ歩いて行く
時間 例) だんだんわからなくなっていく