夢を追いかけるスーダン人をインタビュー!柔道講師編

コラム
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スーダンの街角で聞こえる威勢の良い日本語

先生の整列という声で子どもたちがピシッと一列に並んでいく。右端からまだ帯を上手に絞められない子の帯を先生は慣れた手つきで直していく。礼という掛け声で子どもたちは浅くお辞儀をする。

ここはスーダンの首都ハルツームにあるトレーニングジムだ。2020年7月から柔道教室が開催され、柔道用語が日本語で飛び交っている。

柔道教室で講師を勤めるのは、アムロ・ムハンマド・アルアミーンさん。日本の武術をスーダンで広めている彼にインタビューをしてみました。

柔道講師アムロさんへのインタビュー

たろう)
本日はインタビューに協力ありがとうございます。まずは、日本のみなさんに自己紹介をお願いします。

アムロ)
私は、アムロ・ムハンマド・アルアミーンです。30歳です。
2013年にスーダン大学メカニカルエンジニア学部を卒業しました。テレビ会社で働いていましたが、2か月前に仕事をやめて今は柔道の講師をしながら副業で映像編集をしています。

た)
仕事をやめてしまったきっかけはなんですか?

ア)
会社員のときは忙しくて柔道をする時間がなかったです。このジムのオーナーから柔道のコーチをしないかと誘われ、自分の練習もできると思って仕事をやめてしまいました

た)
今は柔道が生活の中心にあるっていう感じなんですね。そんな柔道ですが、いつ始めたのかと始めたきっかけを教えてください。

ア)
柔道を始めたのは2005年で、15歳のときです。
格闘技をやりたかったのですが、母から猛反対を受けました。やりたい気持ちが抑えられず、こっそり隠れてやろうと思ったんです。でも、ボクシングや総合格闘技だと顔に傷ができてバレてしまうのでできませんでした。

そんなとき、地域のスポーツセンターで無料の柔道教室が開催されているのを知り、打撃攻撃がないので顔に傷がつかず、母にバレずにできそうだということで柔道を始めることにしました。

た)
最初は消去法みたいな感じだったんだね(笑)
それから15年ずっと柔道をやっていますが、あなたにとって柔道の魅力はどんなところにありますか。

ア)
スーダン人は背が大きい人が多くて、僕は身長がみんなより低くて自身が持てない時もありました。でも、柔道は背が小さくても技がうまくなれば大きな人も投げることができるというところが面白くて好きです。それがメンタル面での自信にもつながってます。

た)
小さいといっても170㎝は日本じゃ結構普通です(笑) 練習のおかげもあって外国の大会にもでるようになったけど、何回くらい出場していますか。

ア)
海外での大会は5回出場しています。その内2回は柔道グランドスラムという世界大会です。2017年のドバイと2017年東京大会に出場しています。東京大会では、日本人の立川新選手と対戦しました。

た)
グランドスラムの結果はどんな感じだった?

ア)
まだ世界大会では勝てていません。今の目標は世界大会での1勝です。

た)
世界大会に参加してみて、何か新たな発見とか感じたことはありますか?

ア)
立川新選手との試合では何もできずに負けてしまい、世界のレベルの高さを感じました。でも、どのぐらい自分を高めていけばいいかもわかったのでよい経験ができました。

た)
日本人選手は競争が激しいので、トップレベルの選手は恐ろしいほど強いでしょうね。

ア)
人間じゃないと思いました(笑)

た)
スーダンで初の柔道大会を開催したのが2018年でしたが、その反響はどうでしたか。

ア)
国内大会を開催してから柔道をやりたいという人が増えました。取材の問い合わせもたくさんきました。宣伝効果は抜群でした。第二回をやりたいですが、スーダン国内の状況が良くないですね。

た)
私も大会に出場して、スーダン柔道に可能性を感じました。早く第二回を開催したいですね。
ところで今、子どもや女性に柔道を教えていますがなぜ子どもや女性に柔道を教えようと思ったのですか。

ア)
スーダンの学校はスポーツの授業が重視されていません。日中は暑くて外でスポーツはできないし、先生は女性が多いのでスポーツが教えられません。サッカーくらいしかスポーツ経験のない子どもばかりです。
ですので体の使い方がわからないの子が多く、こちらの動きを真似できない子がほとんどです。

た)確かに、日本だと毎週体育でいろいろな運動を小さなころからやっているので、体の動かし方がスーダンの子どもよりもスムーズだと感じますね。

ア)柔道に必要なストレッチやマット運動、受身などは子どもの身体の発達において大事だと思っています。

た)
柔道マットに入るときは必ず子どもが一礼して入っているけど、これも指導していますか。

ア)
柔道は相手を尊重する礼儀が最も重要だと教わりました。なので、マットに入る際は一礼して入るように指導しています。

た)
素晴らしいですね。子どもの男女比でみると女性のほうが多いけどなぜでしょう。

ア)
ジムのあるこの地域はお金持ちの多いエリアで、通っているのはスーダンでも上流階級の子どもです。そのためセルフディフェンスのために柔道を習わせたいという親が多いです。

た)
そうなんですね。成人女性もスポーツというよりも、セルフディフェンスのために柔道をやる人が多いですよね。

ア)
はい、きっかけはそうですね。でもだんだん楽しくなっていくのが柔道ですね。

見学に来ている親御さんにも話を聞いてみましょう。

柔道を息子さんに習わせている理由を教えてください。

 

7歳の息子の母)
まず第一に子どもに自信をつけてほしいと思いました。柔道は礼儀も教えてくれ、暴力ではなく相手を尊重するスポーツなので教育にもいいとおもい柔道を選びました。この先も、本人の意思で続けてほしいと思っています。

た)
親心はどこの国でも変わらないのだなと感動しています。最後に今後の目標を教えてください。

ア)
30歳でチャンスはもう多くはないですが、世界大会で1勝することと、できればオリンピックに出場したいです。今はスポーツ省とスーダン柔道連盟の間でいざこざがあって乗り越える壁がたくさんありますが、がんばります。

そして、スーダン国内で柔道がより広く知られるスポーツとなるように後任の育成にも力を入れていきたいと思っています。

た)
素敵な夢ですね。本日はありがとうございました

ア)こちらこそ、ありがとうございました。

 

子どもへの指導では、絶対に叱らない姿が印象的でした。柔道を好きになってもらうというテーマがアムロさんの中にはあるのだなと強く感じました。子どもたちも慣れない日本語の技名を口にして楽しそうに体を動かしていて、見ているこちらも楽しい気持ちにさせてくれました。