スピーチで掴んだ夢
日本に行きたいという夢を持つスーダン人は多くいる。しかし、そこに立ちはだかるのは往復10万円そこそこの航空券代とビザ代、さらに高い滞在費だ。
スーダンの平均月収は200ドルに満たない。頑張っても頑張ってもなかなか日本に行く夢を掴むことはむずかしい。
そんな高い壁を自力でよじ登ったのがアスィールさんだ。
彼女はカイロ大学で行われた日本語スピーチコンテストへスーダンから乗り込み見事優勝し、優勝賞品の日本行きの航空チケットを手に入れた。
今回は、そんな彼女にインタビューをしていきます。
アスィールさんへのインタビュー
たろう)
本日はインタビューへの協力ありがとうございます。まずは日本のみなさんに自己紹介をお願いします。
アスィール)
私の名前は、アスィールです。大学院の博士課程を卒業して、今はexternal auditorの仕事をしています。年齢は秘密です(笑)
た)
日本語の勉強はいつから始めましたか?
ア)
日本語を始めたのは2016年ですね。
た)
なにかきっかけはあったのでしょうか。
ア)
日本語の歌を聞いたとき、なんて美しい言語なんだろうと感動して、それからずっと日本語を勉強しています。また自分で歌も作ったりしています。
た)
そうでしたね。日本語に出会った感動をスピーチしたんでしたもんね。
ア)
はい、まずスーダンのスピーチコンテストで優勝し推薦でエジプトのカイロ大学のスピーチコンテストに参加しました。題名は「なぜ日本語なのか」でした。
このスピーチのなかで私が日本語に出会ったときの喜びをスピーチしました。
た)
ちょっと短く出会ったときの様子を教えてください(笑)
ア)
新しい世界の扉をみつけたようでした。そして開けてみるとレインボーのように美しい世界だったんです。
た)
スピーチの優勝商品が日本への航空チケットでしたね。2019年4月に日本へ行きましたが、そのときの気持ちを教えてください。
ア)
ずっと夢にみていた世界が目の前にあるのは不思議でした。日本にいてもずっと夢のなかにいるようで起きたら終わってしまうのではないかと毎日思っていました。
た)
夢に見ていた日本ですが、実際に見てみてなにか想像と違うことはありましたか?
ア)
アニメでみた日本人はビジネスライクで冷たい印象がありましたが、外国人にもとっても優しかったのが想像と違いました。新宿駅で道に迷ったとき、丁寧に道を教えてくれるので驚くとともに感動しました。特に日本のおじいちゃんは優しかったです。
た)
日本にはどれぐらいの期間いて、どんな場所に行ってみましたか?
ア)
日本には20日間いました。本当はもっといたかったのですがチケット上仕方ないですね。
日本では、東京、横浜、熱海、名古屋、大阪、京都へ行きました。夜行バスはスーダンにないので怖かったですが、安くて便利でした。
た)
多くの場所を観光していますが、どこが一番心に残っていますか。
ア)
一番は熱海ですね。まずJICAのシニアボランティアでスーダンで活動していた方と再会できたのが嬉しかったです。
そして、人生で初めて温泉に入りました。
た)
スーダンはシャワーだけですもんね。温泉に入ってみてどうでしたか?
ア)
恥ずかしかったですが、夕陽を見ながら温かいお湯に浸かるのは最高に気持ちよかったです。
た)
日本の食べ物はどうでしたか?
ア)
抹茶の味が大好きになりました。特に抹茶味のお菓子は最高です。お寿司はちょっと苦手でした(笑)
た)
スーダンでは抹茶が手に入らないので、抹茶味のお菓子屋を作ったら流行るかもしれないですね。
日本へ行った経験から何か人生で変わったことがありますか?
ア)
新しい夢ができました。
今はJLPTのN5とN4を持っていますが、もっと上位のレベルに合格したいです。
できれば日本で日本語を勉強して、将来的にはスーダンで日本語の先生をやりたいと思っています。
た)
新しい目標に向かって走り始めたのですね。これからも応援していきます。
本日はインタビューありがとうございました。
ア)
こちらこそありがとうございました。
自分の手で夢を追いかけ夢を掴んだアスィールさんの話を聞いていると、望めば叶うことの多い日本とは違い多くの制約の中にあるスーダンでも夢をみることの大切さを教えてくれました。