コラム「スーダンとラクダー砂漠の船と浄水機能」

ラクダビール コラム
スポンサーリンク

砂漠と言えばラクダ、ラクダと言えばスーダンと言えるほどスーダンにはラクダが多くいる。
その数は約500万頭とされ、ソマリアの700万頭に続いて世界で2番目に多く生息している※。

スーダンの高温で乾燥した土地で生き抜くために、古来よりラクダは欠かすことのできない存在であった。この文章では、スーダン人とラクダとの深い関係を紐解いていきたい。

※FAO2015年のデータ

スーダンのラクダ

子どもにラクダの絵を描かせてみてほしい。どんな姿でラクダを描くだろうか。

多くの子どもは、コブが2つある姿を描くのではないだろうか。

実はスーダンには背中にコブが2つあるフタコブラクダは生息していない。
スーダンに生息しているのはコブが1つだけのヒトコブラクダである。

ラクダは非常に高値で取引される。そのためスーダンのラクダはサウジアラビアやエジプト、リビアなどに数多く輸出されている。政府はラクダ取引で歳入を増やしたいのだが、密輸が横行しており度々密輸業者の逮捕がニュースに大きく取り上げられている。

⇓写真はかつてスーダンで販売されていたビールの広告。ヒトコブラクダが書かれている。

ラクダビール

砂漠の舟

ラクダは乾燥地帯に非常に強い生き物で、1度に数十リットルの水を体内に蓄えることができる。そのため数日間水を飲まなくても耐えられる。コブに水をためていると思われがちだがコブには脂肪を蓄えてある。ラクダはコブではなく血液中に水を貯めこんでいる。

ラクダは平べったい蹄をしていて、砂の上でも沈むことなく歩くことができる。時速40㎞で走ることができ、最速では60kmぐらい出せる。中東ではラクダのレースも開催されている。

乾燥地帯に強いだけでなく、荷物を積んで長距離を移動できるスタミナもあるため人間が砂漠を移動するときは、ラクダが古来より用いられてきた。そのためラクダは「砂漠の舟」とも呼ばれている。

ラクダと巡礼

紅海に面するスーダンの港町スワキンはかつてアフリカとアラビア半島を結ぶ拠点として栄えた町である。現在は人は住んでいるのだが崩れた建物が多く廃墟のような街並みが広がる。


アフリカ大陸に住むイスラーム教徒がイスラーム教の聖地マッカへの巡礼をするときは、スワキンから船でアラビア半島へ渡るルートが一般的に用いられていた。
スワキンまでの道のりは、乾燥地帯を旅してこなければならず、巡礼はラクダに乗って行われていたと考えられている。
こうした巡礼のためのサハラ横断は、大規模なキャラバンを組んで行われた。もちろん物資をラクダに積んでいて、巡礼の費用を交易で稼ぎながら聖地マッカを目指していた。このように経済的な側面でも巡礼は現地の経済に大きな影響を与えていたと考えられている。イスラーム教では旅人に親切にせよという教えがあるが、当時の旅というのは現在の観光旅行とは違い、実益をもたらすものであった側面が大きいと考えている。

現在もスワキンの町からサウジアラビアのジェッダへはフェリーが運航し、スーダン人が巡礼で使うこともあるが、アフリカ大陸の巡礼者の多くが飛行機を使う現代ではラクダによる巡礼は見られなくなってしまった。


そのサハラをラクダを一匹連れて一人で西のモーリタニアから東のポートスーダンまでアフリカを横断しようとした日本人がいる。
彼の名は上温湯隆。
その挑戦は、一冊の本として世に残された。必読の一冊だ。

ラクダのミルク

ラクダは移動に便利な生き物だけでなく、栄養豊富なミルクが人間の生活を支えてきた。
ラクダのミルクは牛乳に比べて低脂肪で、ビタミンCと鉄分が豊富なのが特徴である。

長旅ではどうしても野菜や果物不足に陥る。船乗りは航海の途中ビタミンの欠乏による壊血症を発症することが多かったが、砂漠の旅はラクダがそれを防いでくれていた。

ラクダは天然ろ過装置

スーダンの都市部では水道設備が整備されていて、お店ではミネラルウォーターが売られるようになっているが、都市から一歩外に出ると途端に景色がかわる。インフラが急激に悪化し水にアクセスすることが難しくなる。多くの人は綺麗な水にアクセスできず、泥水を飲んでいる人もいる。

そんな土地で生きるヒントはラクダにある。秋田大学の縄田浩志教授は、スーダン東部の紅海の町ポートスーダンという地域でラクダは「海水淡水化プラント」の役割を担い人間とラクダは昔から共存関係にあったとしている。人間は海水を飲むことができないがラクダは海水を飲むことができ、ラクダに海水を飲ませラクダの乳を人間が飲む。真水の手に入りにくい地域でもラクダを浄水機能として用いることで今日まで生きてこられたとしている。

・マングローブの木を食べるラクダ、水分は海水を飲む
出典:https://www.tbs.co.jp/heritage/2nd/feature/2017/201710_02.html

ラクダ

ポートスーダンは二度訪れたことがあるが、土地の塩分濃度が高く塩が結晶化している場所も多い。地下水は海水のようで、水道からは塩水がでる。そんな真水のない地域でラクダが果たしてきた役割は大きい。

写真はポートスーダンの幹線道路を塞ぐラクダの群れ
ポートスーダンラクダ

これはポートスーダンに限ったことではなくスーダン全土で見られる光景だ。人間が飲めないような水でもラクダは飲むことができる。ラクダの乳を人間が飲む。ラクダは天然の浄水装置としてスーダンの人は古来からラクダと共に生きてきたのである。